好きな絵描きさん

いせひでこさん 自分で獲得して描くことを教えてくれた絵本作家

2021年1月17日

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こんにちは、Noraです(^^)/

今日は私の好きな絵本作家さんについて語っていこうと思います。

今回は「いせひでこ(伊勢英子)」さんです。

現実と幻想が一体になったような、どこか寂しいような、それでいてあたたかい何かを感じさせる絵を描かれる方です。
(※あくまで、私がいせさんの絵を見て抱いた印象です)。

「であい」はいつも、何気ないところから

私がいせひでこさんを知ったきっかけは、酒井駒子さん目当てで買ったこちらの本でした。

「illustration 別冊 絵本 作家73人の話」

出版社:玄光社MOOK

ちょうど酒井さんの次に特集が組まれていて、買って最初のうちは飛ばし飛ばしで読んでいたのですが、

購入してしばらく経った後最初から読んでみようと思い読み始めたところ、

いせさん自身の絵に対する思いや使っている画材、絵本を作る上での過程を文面からでも伝わるほど熱く語っていらっしゃり、とても引き込まれました。

酒井駒子さんについての記事はこちら。
酒井駒子さん 黒を愛らしさに変貌させる絵本作家

いせさんの絵の特徴は、水彩絵の具やアクリル絵の具で表現される、切なくて少し寂しい雰囲気の絵です。

大きな風景の中に後ろ姿の人物が入っている絵が特に素敵!
木や葉っぱ、空や雲などを始めとする自然の絵は、まるで生きているかのような躍動感を感じます。

私は明るくて優しい華やかな絵も好きなんですが、いせさんのような哀愁ただよう切ない感じの絵も大好きです。

いせひでこ 作品集 PROCESSUS プロセス」

作者:いせひでこ
出版社:玄光社

本屋さんで偶然見つけたこちらの作品集は、わたしの宝物のひとつです。

いせさんの作品に限らずですが、私は完成された絵を見るのはもちろん、ラフ画や下描き、完成されるまでの過程を見るのも大好きなんです。

それぞれに違った魅力が溢れているし、絵を描くときのモチベーションも上がります。

十数年ぶりの思わぬ再会!?

ある日、いせさんの絵本を読んでいたときに、ふとこんな疑問が生まれてきました。

「いせさんの絵を見ると、なんだか懐かしい気持ちがする…どこかで見たことある気がする…」

その疑問が晴れたのは、いせさんを知ってから数年経った頃です。

実は子どもの頃、いせさんが挿絵を担当したお話を教科書で読んだことがあるのを思い出したのです。

それがこちらの「海のいのち」という絵本です。

「海のいのち」

作:立松和平 絵:伊勢英子
出版社:ポプラ社

確か小学校3年生か4年生くらいの時だったと思います。

当時いせさんの挿絵を見たとき、ちょっと怖い感じがするのになんだか引き込まれる、という感覚があったのを覚えています。

特にクライマックスで主人公が海ととけあっているような挿絵は、子どもながらに「すごくきれいな絵だ」と思っていました。

子どもの頃、私はすでにいせさんの絵に出合っていたのです。
それがこんな形で再会できるとは思っていませんでした。嬉しい驚きです!

いせさんの熱意に脱帽…!

そして、このお話の挿絵を描くにあたって、なんといせさんは海が苦手なのにもかかわらず、ダイビングの免許を取得して実際に海に潜ることをしたそうです。

というのも、いせさんが絵を描く上で大切にしていることは、自分で獲得して描くということだからです。

いせさんはインタビューで「海のいのち」を描くとき、

「海の底の話なのに、写真や映像だけではどうしても海の温度、水の質感、音の感覚などがわからなくて、
 実際に潜ってみたら、潮の流れや海から見た光、海底の生き物、知らなかったものにたくさん出合えた」

(「illustration 別冊 絵本 作家73人の話」より引用)

とおっしゃっていました。

今はネット社会で、ちょっと検索すれば自分が描きたいモチーフや参考にできるものがたくさんヒットしますが、そういうものに頼らず、

海の絵を描くなら海に潜る、
緑の絵を描くなら森や山に出かける、
子どもの絵を描くなら子どもと接する…

など、可能な限り自分自身で体験して自分の中に取り込んで絵を描く、ということを、いせさんはずっと行ってきたとのことです。

「そこまでする!?」と驚く人もいるかもしれませんが、逆に

「実際に自分の五感をフル稼働させて、自分の中に取り込んで絵を描く」

という情熱をかけているからこそ、あのような素晴らしい絵が描けるのかもしれないですね…。

「安易なものに頼りすぎると、作るものが似たり寄ったりで、
 ただの情報の寄せ集めになってしまう」

(「illustration 別冊 絵本 作家73人の話」より引用)

いせさんのこの言葉は厳しいですが、確かに一理ありだと思います。

私は絵を描くときは、どちらかというとネットで検索する比率が高いのですが、

身近なところにあるものは、なるべく本物を見たり触ったりして絵を描こう!

…という気持ちだけはあります(笑)。
いや、これからは少しずつ本物を見て描くことをしていこう…うん。

いせひでこさんのおすすめ絵本3選!

ではここで、いせひでこさんの絵本で、わたしが好きなものをご紹介します。

絵描き

「絵描き」

作:伊勢英子
出版社:平凡社

絵描きとして、自分の中に生まれたものをどこまでも追い求める画家の姿が描かれている絵本です。
この絵本の主人公は、もしかしたらいせさん自身なのではないかなと思います。

「自分がであってきたもの、見てきた風景はすべて繋がっている」

ということを、最低限の言葉と自然をモチーフにしたすばらしい絵で語りかけていて、ところどころに、いせさんが長年研究している宮沢賢治とゴッホの姿を彷彿とさせます。

絵を描く人はもちろんのこと、何かを創る人にはぜひ一度読んでみてほしい絵本です。

ルリユールおじさん

「ルリユールおじさん」

作者:いせひでこ
出版社:講談社

お気に入りの本がバラバラになってしまった少女と、ルリユール=本を直す職人のおじさんとの何気ない出会いから始まった交流を描いた絵本です。

いせさんが、パリにスケッチ旅行へ出かけた時にルリユールおじさんの工房の窓に惹きつけられたことで生まれた作品で、
「illustration 別冊 絵本 作家73人の話」でのインタビューによると、これはいせさんの理想郷だそうです。

こちらの絵本のことは「illustration 別冊~」で知ったのですが、「本を直す」という興味ある題材を扱っていたこともあり、知ったとたんに読みたい気持ちが沸き上がり、すぐに本屋さんに行って購入しました。

にいさん

「にいさん」

作者:いせひでこ
出版社:偕成社

ざっくり言うと、オランダの画家ゴッホとその弟テオの話を基にした物語です。

いせさんが、長年ゴッホとテオについて研究を続け、オマージュ的にまとめたのがこの絵本ではないかと思います。
いせさんなりにたどり着いた答えという印象を受けました。

こちらは水彩ではなく、アクリル絵の具で描かれており、切ない中にも重厚感が加わった絵が印象的です。

いせさんはご自身で、

「ものすごく色音痴で、黄色と赤と茶色が使えない」

(「illustration 別冊 絵本 作家73人の話」より引用)

とインタビューでおしゃっていましたが、この絵本は例外だそうです。

好きという気持ちや何かの答えを追い求める気持ちは、苦手意識すら通り越してしまうんでしょうか。
すごいパワーですよね。

旅する絵描き パリからの手紙

「旅する絵描き パリからの手紙」

作者:伊勢英子
出版社:平凡社

こちらはいせさんのエッセイ集です。

「絵描き」や「ルリユールおじさん」がどのようにして生まれたのかが手紙形式の文章で語られており、未公開のスケッチも多数収録されています。

絵本を読んだ後に読むも良し、絵本の前にエッセイを読むも良し!な本です。

透明水彩やアクリル絵の具で描かれる絵と、最低限の言葉で語られるお話。
いせさんの絵本は、どこか切ないけれど懐かしい気持ちになることが多い気がします。

興味が湧いた方は、ぜひ一度手に取って読んでみてください!

それでは、最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

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